高速道路は周知の通り、長期休暇に合わせて渋滞が増加します。ゴールデンウィークやお盆・年末年始は壮絶で、50キロを超える渋滞も珍しくありません。テレビなどの報道を見ていると、現場は地獄のように思えてきますが、実際はどうなのでしょう。
「動く渋滞」と「動かない渋滞」
高速道路の渋滞には、「動く渋滞」と「動かない渋滞」の2種類があります。前者は、平均時速20~30キロで動く渋滞。後者はそれ未満で、多くの場合時速10キロ程度です。
このふたつはどこに差があるのでしょう。「動く渋滞」は、第1回で取り上げた「サグ」を原因とした自然渋滞です。一見、何も障害がないところを先頭に発生し、全体にダラダラと前進して、完全に停止してしまうことが少ない、精神的にも肉体的にもラクな渋滞です。この「動く渋滞」は、平均すると時速25キロで前進します。つまり、「渋滞25キロ」という表示があっても、1時間で通過できるわけです。25キロという数字を見ると目の前が真っ暗になるかもしれませんが、1時間というのは意外と大した時間じゃありません。渋滞50キロでも2時間ですから、前後に休憩を入れれば、十分乗り切れます。
一方、「動かない渋滞」の代表は事故渋滞です。事故現場では、多くのクルマが「どこがぶつかったのかな」と凝視するため大きく速度が落ちます。そこに事故処理のための車線減少が加わると、平均速度は「動く渋滞」の半分から3分の1程度にまで落ちてしまいます。渋滞25キロでも最低2時間。完全に停止してしまう時間も長いので、非常に疲れます。
渋滞緩和対策の進行
事故でなくても、渋滞の途中に車線数が減少するポイントがあると、そこから上流側はすべて「動かない渋滞」になってしまいます。事故でなくても動かない渋滞なので、「いつも動かない渋滞」とでも言えばいいでしょうか。 たとえば、かつて東北道下り線には、「大谷パーキングエリア付近」という渋滞の名所がありました。これは一種のサグでしたが、その8キロ上流側の鹿沼インターで車線数が3から2に絞られていたため、渋滞が鹿沼インターを越えて上流側に伸びると、そこから先は「いつも動かない渋滞」になっていました。
かつて、高速道路の渋滞は、過半数がこの「いつも動かない渋滞」だったのです。昔大渋滞にハマってひどい目にあった人の中には、「もう渋滞は一生こりごり」と思って、クルマで行楽に出るのを一切避けている方もいます。 ところが近年、この「いつも動かない渋滞」は大幅に減っているのです。 原因は、渋滞緩和対策の進行です。たとえば前述の「大谷パーキングエリア付近」は、99年にひとつ先の宇都宮インターまでの拡幅が完成し、完全に消滅しました。現在この近辺では、「矢板インター付近」のサグを先頭に上下線とも渋滞しますが、「動く渋滞」なのでそれほどつらくはありません。 その他常磐道、関越道、東名も、渋滞緩和対策によって、「いつも動かない渋滞」は発生しなくなっています。 例外は中央道上り(上野原インターより上流側)と山陽道上り(神戸ジャンクションより上流側)です。このふたつは渋滞の途中に車線減少ポイントがあるため、今でも「いつも動かない渋滞」が発生するので要注意です。 現在、日本最悪の「いつも動かない渋滞」のポイントは、阪和道上りの有田インター(和歌山県)より上流側です。ここは平均時速たったの5キロ!片側1車線の本線に、有田インターから大量のクルマが合流してくるという特殊事情により、こんな状況が毎週日曜日起きています。5キロに1時間かかるのですから、本当に辛いです。事前に情報収集を
まとめると、近年の高速道路の渋滞は、大半はそれほど恐れる必要のないものです。「渋滞50キロ」でも、ふだんより1時間半余計にかかるだけだと思えば、かなり気が楽になるのではないでしょうか。
ただ、路線によっては「いつも動かない渋滞」が残っているので注意。加えて事故渋滞は、いつどこで起きるかわかりません。その時は、かなり覚悟を決める必要があります。
備えあれば憂いなし。事前に情報を集め、飲み物や子供用の簡易トイレなどを準備した上で出かけるのがベストでしょう。